コラム

no.042
職場で「能力開発が進まない」5つのワケ

2017年7月25日 | 取締役 吉田卓

「今、社員のどのような能力を高め、どのように成長を支援していきたいと考えていますか?」また、「その成長支援は、職場でもスムーズに展開していける自信と手応えはありますか?」

皆さんはこれらの問いに対して、どうお答えになるだろうか。

私たちを取り巻くビジネス環境は、日進月歩で複雑性と不透明さが増し、直面する課題も高度化していることを痛感せずにはいられない。人事・人材開発担当者として、それらを乗り切り、自身の、あるいは社員の成長に関して真剣に考え、具体的アクションにつなげていくことが、これまでにも増して求められていることも実感する毎日であろう。

これまで我が社もこのような各社の背景から、様々なトレーニング、アセスメントなどを提供し、能力開発の支援を全力で展開してきた。その甲斐あって、“サービスそのもの”への高い満足度が得られることは少なくないが、“企業内人材育成”として、職場でも「能力開発が進んでいるか?」と問うと、答えは一様ではない気がしている。

今回のコラムでは、これまで私が各組織で見聞きしてきた“現場で能力開発が進まないワケ”を5つのポイントに整理してみたいと思う。

(1)“漠然・曖昧な”能力の開発に奔走している
現場では、“漠然・曖昧な”能力を伸ばすことに労力が割かれがちである。例えば、「マネジメント能力」というのは、まさに「漠然・曖昧」とした能力の最たる例であろう。私たちの能力は、個別具体的に特定し、個別具体的な実践を意図的に取り組むことでしか向上しない。まずは、開発対象とする能力を特定していくことが大切であり、その能力が現状どのレベルにあるのかを客観的に知ることも同時に重要である。

(2)現場では、結局「短期成果をあげている人」が“ヒーロー”である
成果主義、業績至上主義のもとでは、とりあえず成果さえ残していれば組織から一定の評価はされる。処遇も結局は成果次第となりがちである。極論、能力開発を進めなくても、成果さえあげていれば、給与も下がることはない。つまり、職場では、変革を推し進めたり、挑戦的課題に取り組んだりする人よりも、成果をあげている人が“暗黙のヒーロー”になっている傾向があり、能力開発への機運が高まり切らない職場に陥る要因にもなっている。

(3)能力開発を進めても、“その先のいいこと”が見えてこない
研修受講後は、自分自身の中で問題意識も高まり、実務でより高い成果を出すために能力開発を進めようと志向するが、本質的な「動機」が喚起されていないケースも多い。そもそも、職場では「能力」と「職位・役割」の関係性も曖昧になっていることから、自分自身が能力開発をどこまで進めれば、管理職、専門職、経営職などの目標となる職位に到達できるのかのストーリーが描けていない社員が多く存在している。また、その社員一人ひとりに「目指したいリーダー像」が明確になっていないことも、動機が形成されない大きな要因であると考えられる。

(4)能力開発の“具体的なテーマや方法論(処方箋)”が分からない
「なんとなく今のままではいけない」・・・とは思いつつも、「何をどうやって磨いていくか」、「何をどのように変えていくか」の方法論(処方箋)がないという現実は避けて通れない。実際、「問題解決力」という能力を強化するための方法論を理解している人が職場にほとんどいない、と頭を抱えているクライアントも多い。

(5)能力開発を進めるうえでの「パートナー」や「コーチ」という“伴走者”がいない
能力開発上、苦手分野を克服するのに、人材開発のプロではない社員が一人で進めていくのは極めて困難である。効果的な方法を相談できたり、客観的にフィードバックしてくれたりするパートナーやコーチの存在は必要不可欠となる。くわえて、上司も「能力開発のプロ」とは限らないため、「業務の指導」はできても、「リーダー育成」には意識も知識も及ばないケースが多い。また、挑戦的な課題に取り組み、一人では成し遂げられないことを成し遂げようとする際には、他者からの支援が不可欠である。高度な課題を「他の誰か」と乗り越えた時に、自分の能力をはるかに上回る成長が実感できるのも理解は難くないであろう。

上記のポイントからも分かる通り、社員の能力開発は一朝一夕では進まない。「置かれた“環境”」「直面する“課題”」「支援する“人”」による要素が極めて大きい。

これら「能力開発が進まないワケ」を自組織にも当てはめ、人事・人材開発部門として改革・改善できそうな領域から着手されることを勧めたい。そして、我々リードクリエイトもこのような構造を生み出さない能力開発アプローチを各社に提供していけるよう、日々研鑽、精進していく所存である。