コラム

no.040
米国・アトランタで実感した『世界の人事の潮流』とは

2017年5月30日 | 取締役 菅桂次郎

米国・アトランタにおいて5月21日~24日の4日間で開催されたATD主催のインターナショナルカンファレンス&エキスポに、弊社から私を含む4名のメンバーで参加してきた。

ATDとは、Association for Talent Developmentの略であり、企業や行政体の組織におけるラーニングとパフォーマンスの向上を支援することを使命とした人材育成や組織開発に関する世界最大の機関である。

今期のカンファレンスのキーワードは「Science & Technology」。300以上の様々なテーマのセッションが設けられ、各国企業の人事担当者など、約9,000人が参加し、人事の最新事例や今後の在り方について学び合った。

今回は、そこで感じ取った「世界の人事の潮流」についてコメントしたい。

人材育成や組織開発における「Science(科学)」では、脳科学を前提としたアプローチが、具体的な検証結果とともに実践の中に取り入れられつつある。人が本来的に持っている力を発揮させるためのアプローチは、従来の教育手法でさらに強化できるものもあれば、逆効果のものもあり、それらが脳科学的な見地から検証されつつあるのだ。

我々が提供している集合型研修の在り方も、Face to Faceだからこそ得られる「学習効果の再定義」をはじめ、「講師と受講生の関係性」や「プログラム設計の在り方」など、「学びの場の設計」についてのパラダイムシフトが近い将来訪れるのだろう。

そしてその背景にあるのは、「Technology(技術)」の進化であり、オンライン学習などを積極的に取り入れた「学び方の変革」がそこまで近づいている。一言で言えば、「個人に合わせた学習」の実現である。

これらの「Science & Technology」をキーワードとした取り組みの中で私が最も強く感じたことは、人事とステークホルダーの強固な連携だ。経営と人事はもちろん、人事部門とシステム部門の連携は日本企業とは比較にならないレベルであるように感じた。むしろ連携という枠を超え、同一の目的を持ったチームという印象だ。

また、企業内に留まることもなく、大学をはじめとする教育機関や我々のようなコンサルティング会社や教育ベンダーとのパートナーシップも連携の深さに大きな違いがあるように感じられた。まさに運命共同体として、関係者が知見を持ち寄り、より良い企業活動、もっと言えばより良い社会の実現に向けてオープンに連携しているのだ。

いくつかの先進的な企業では、社員を含めた学習対象を「学習者」と定義し、取引先などのビジネスパートナーや地域住民、学生(将来の社員候補)にも広く学習機会を提供し、相互学習の関係を構築することで、従来の学習の質を抜本的に変えている取り組み事例もあった。所謂、「他流試合」による学びを各社が主導するというアプローチだ。

一方で、継続的にパフォーマンスを上げる組織づくりに向けては、社員間の信頼関係が重要であるという、当然と言えば当然のメッセージも多くのセッションで発信されていた。

結局のところ、欧米の多くの企業でも、日々のコミュニケーションを前提とした信頼関係が最も重要であり、「安心して働ける環境」こそが、人間が本来持つ力を如何なく発揮するためには欠かせないということだ。

「Science & Technology」といった最新の変化の方向性を追いつつも、人間が人間らしく生きていくために必要なエッセンスについては、本質的な違いはないという明確な軸を持ち、クライアント企業の皆様と共に今後の人事の在り方を形作っていきたいと思った。

そして近い将来、「日本発」の人事の在り方と先進的な取り組み事例を、世界に向けて発信していきたい。

そう強く感じた米国・アトランタでの経験であった。